【最重要】相続が起こる前に抑えておきたい相続税の基礎控除
公開日 2019年7月1日 最終更新日 2019年11月2日
最終更新日:2019/07/01
こんにちは、名古屋相続税無料診断センターの佐治です。
今回は相続が起こる前に知っておきたい相続税の基礎控除について話をします。
相続が発生すると、相続税がかかるかもって心配する方も多いと思います。
しかし相続税を計算するためには相続税の基礎控除というものがあり、
基礎控除を超えた一定額以上の遺産がある場合にのみ申告が必要に
なる手続きです。
そこで重要になるのが相続税の基礎控除です。
この記事では相続税専門の税理士が、相続税の基礎控除に
ついて簡単な事例を交えて相税と基礎控除の関係を詳しく
説明します。
もくじ
|
順番に、サクサクと見ていきます。
1.相続税の基礎控除とは
相続税の基礎控除とは、故人が保有していた財産のうち、
一定金額までは相続税の申告行わなくても大丈夫という
ボーダーラインのことです。
ここでいう相続税の申告とは、税金の納税と相続税申告書の提出の2つを指します。
この一定金額は、下記算式で計算を行います。
3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
つまり、
遺産の総額 > 基礎控除
この場合は、相続税の申告を行う必要があり、
遺産の総額 < 基礎控除
この場合は、相続税の申告をする必要がないことになります。
よく聞かれる疑問としては、算式にある「法定相続人の数」についてです。
法定相続人の数とは、簡単に一言でいうと、”相続人の人数”のことを言います。
ちなみに、この“相続人の人数”については相続人の中に相続放棄
をしたものがいても、その放棄をした者の人数を含めて計算します。
相続放棄をしたことにより新たに相続人になった者の人数は含めません。
また、故人に養子がいる場合、一定の数を法定相続人に含めます。
なお、相続税の基礎控除は平成27年に大きな税制改正があり、
大幅に引き下げられています。
平成26年12月31日までに相続が発生した場合には、
「5,000万円+1,000万円×法定相続人の人数」
という算式でした。
平成27年1月1日以降発生の相続については
「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」に変更になっています。
基礎控除が4割減少し、相続税の増税になりました。
2.相続税の申告が必要なとき
遺産の総額が
3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
上記算式で計算を行った金額を超えた場合、相続税の申告が必要になります。
簡単な例を用いて、どのような場合に相続税の申告が必要になるのかを見てみましょう。
例1)基礎控除を超えないパターン
(相続税の納税が必要ない場合)
亡くなった人 : 父
相続人 : 母と子2人の計3人
父の遺産 : 3,000万円 |
この場合の基礎控除金額は、
3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
となります。
この4,800万円と、父の遺産3,000万円の比較を行います。
3,000万円 < 4,800万円
となりますので、
遺産の総額が基礎控除より低いため、相続税の申告を行う必要がありません。
例2)基礎控除を超えるパターン
(相続税の納税が必要な場合)
亡くなった人 : 父
相続人 : 母と子2人の計3人
父の遺産 : 7,000万円 |
この場合
3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
となります。
この4,800万円と、父の遺産7,000万円の比較を行います。
7,000万円 > 4,800万円
となり、遺産の総額が基礎控除より高いため、相続税
の申告を行う必要があります。
3.遺産の総額を計算する
ここまでの話をまとめると
・相続した財産(遺産総額)が基礎控除を超えれば相続税を申告
・遺産総額が基礎控除を超えなければ相続税の申告は不要
の2点だけでした。
ここまでで「遺産の総額」という言葉が何度も出てきました。
「遺産の総額」は相続税の計算をするうえで最重要なので、
次に「遺産の総額」の計算方法について説明します。
「遺産の総額」の基本的な考えは、「故人が所有していた財産を、
お亡くなりになった日時点で換金したらいくらになるのか」
ということです。
つまり故人が保有していた、不動産、有価証券、現金預金、
その他の財産も全て換金し、さらに、故人にかかっていた生命保険
の金額などを合計した金額を、「遺産の総額」といいます。
遺産総額の把握が難しいことがあります。
それは、預貯金や有価証券(株式、投資信託等)、生命保険等の財産を故人
がいくら所有しているかについて、知らない人が多いためです。
特に親と同居していない人であれば、親のお金のことは分からない
のではないでしょうか。
3-1.亡くなった方が管理していた財産を把握する
そんなときには、家の中を片付けながら確認していくしかありません。
現金などの価値あるものがあるので片づけは人に頼まず、相続人
が実施することが多いです。
【預貯金・証券の把握方法】
通常、預貯金や証券等の重要書類は一か所にまとめている人
が多いため確認作業はさほど大変ではないはずです。
家の中に金庫があればもちろん中身を確認しますし、銀行に貸金庫
を借りてその中に重要な書類や通帳を保管している人
も珍しくありません。
家の中を探した結果、通帳や証券等の重要な書類が見つからない
場合には、取引のありそうな金融機関に貸金庫の有無を照会する
必要があります。
■被相続人の金融機関を調べるためには相続人が被相続人の
金融機関を調べるためには戸籍が必要です。
「相続人である」と認められれば、金融機関を調べることは可能です。
【保険金の把握方法】
生命保険に加入していれば、保険証券に死亡保険金の金額が記載されています。
死亡保険金は保険会社に電話し死亡保険金の受け取り確認をとりましょう。
保険証券が見つからない場合、「契約内容のお知らせ」などをもと
に保険会社へ確認をしまししょう。
【株式の把握方法】
証券会社から定期的に届く資産内容のお知らせなどをもと
に証券会社へ確認しましょう。
ネット証券を使っている場合、亡くなった人の手帳でログインID
やパスワードを確認したり、ネットの検索履歴やブックマーク
から証券会社を確認し、連絡しましょう。
【不動産の価格把握は要注意】
自宅は手許にある課税通知書を見ればある程度内容が分かります。
別荘地で固定資産税がかからない場合などは、金庫に権利証
がないか確認し、該当の市区町村役場で評価明細を取得します。
不動産の価格を概算で求めるには
・固定資産税評価証明書×1.14
すれば求められますが、正確な評価額を求めるのは専門性が高く
なりますので税理士に聞いた方が早いです。
なぜ“1.14倍”なのかというのは、理論上「時価を100」とした場合
の「相続税評価は80」、「固定資産税評価は70」と定められている
ためです。
もちろん、多少ずれることはありますが、住宅街の整形地であれば、
ほぼほぼ大きくずれることはないでしょう。
【換金価値がわからない財産の評価方法】
評価で疑問となるのは、お亡くなりになった日時点で実際に換金して
いるわけではないため、不動産や書画、骨とう品などの金額はどのよう
に計算をするべきなのかということです。
換金価値が分からないものをどのように評価を行うかについては、
財産ごとに細かく決まっておりますので、相続税専門の税理士など
へ相談することをおすすめします。
4.遺産の総額と基礎控除を比較する
ここまで、遺産の総額について解説を行ってきましたが、ここで新たに
3つの疑問がでてきます。
・債務や葬儀費用についてどのように考えるのか
・生命保険の非課税について
・各種特例(小規模宅地等の特例や配偶者控除の特例など)を使う場合に、基礎控除と比較する遺産総額はどのように考えるか |
では、早速この3つについて確認をしてみましょう。
4-1.債務や葬式費用は控除して遺産の総額を計算する
遺産の総額を計算する上で、債務や葬式費用については、どのように
考えるかを簡単な例で確認してみましょう。
亡くなった人 : 父
相続人 : 母と子2人の計3人
父の遺産 : 7,000万円
債務 : 100万円
葬式費用 : 200万円 |
この場合の
7,000万円 - 100万円(債務) - 200万円(葬儀費用)
= 6,700万円>4,800万円
となります。
4-2.生命保険金の非課税について
生命保険金を受け取った場合、生命保険金は非課税ということで税金
が掛からないとご存じの方も多いと思いますが、生命保険金を受け
取った場合の基礎控除との関係について見てみましょう。
相続税法上
生命保険には500万円×法定相続人の数という非課税枠があります。
亡くなった人 : 父
相続人 : 母と子2人の計3人
父の遺産 : 7,000万円
生命保険 : 1,500万円
葬儀費用 : 200万円 |
この場合、
7,000万円 – 1,500万円(生命保険の非課税枠)
- 200万円(葬儀費用)= 5,300万円
(※生命保険金の非課税枠の詳しい計算はここでは省略させて頂きます)
が、基礎控除と比較すべき金額となります。
つまり、
5,300万円 > 4,800万円 となります。
4-3.各種特例を使用する前の金額をもって財産の総額を計算する
では、続いて相続税を計算する上で適用のできる各種特例との
関係を見てみましょう。
特例でよくでてくるのが、
・小規模宅地等の特例
・配偶者の軽減税額
の2つになります。
結論からいいますと、基礎控除と比較すべき金額は、各種特例
の適用前の金額です。
小規模宅地等の特例は
土地の評価額×80%(自宅の場合)→土地の価額が2割評価となる
ここも簡単な事例を用いて確認をしていきましょう。
例1) 小規模宅地等の特例を適用する場合
亡くなった人 : 父
相続人 : 母と子2人の計3人
父の遺産 : 土地 7,000万円
建物 : 1,500万円
葬儀費用 : 200万円 |
この場合
7,000万円(土地) + 1,500万円(建物)
- 200万円(葬儀)= 8,300万円
となりますが、
小規模宅地の特例を適用した場合
7,000万円 × 80% = 5,600万円
の減額が可能となります。
この場合、
上記で計算を行った
8,300万円 - 5,600万円 = 2,700万円
を基礎控除と比較すべき金額なのではないかと思われがちですが、
基礎控除と比較を行う金額は、特例適用前の8,300万円となります
ので注意が必要です。
ちなみにこの場合、
8,300万円 > 4,800万円 となり、
基礎控除を超えるため、
相続税を支払う必要はありませんが、
相続続税の申告は必要になります。
例2) 配偶者の税額軽減を適用する場合
亡くなった人 : 父
相続人 : 母と子2人の計3人
父の遺産 : 7,000万円
葬儀費用 : 200万円 |
この場合
7,000万円(土地) - 200万円(葬儀)= 6,800万円
となります。
この父の遺産を全て配偶者である母が取得した場合、配偶者の税額軽減
を適用し支払うべき相続税が0円となり、相続税の申告が不要である
と思われがちです。
しかし相続税の申告が必要かどうかは、遺産総額6,300万円
と基礎控除額を比べるため、特例を適用する前の金額で比較
を行うことに、注意が必要です。
この場合、
6,300万円 > 4,800万円
と基礎控除を超えるため、
相続税の申告は必要になります。
5.財産の総額が基礎控除を超えたとき
ここまで、遺産の総額が基礎控除を超えるかどうかということを、
色々なパターン別でみてきました。
故人の遺産が基礎控除を超えた場合には、相続税の申告が必要となります。
相続税の申告は、相続があったことを知った次の日から10か月以内
にする必要があります。
相続税計算の結果、相続税がかかる場合、その納税期限も申告書
提出期限と同じです。
相続税が発生する場合、相続税をできるだけ節税したいと考える人
も多いと思います。
相続が発生していない場合、相続対策を行うことで大幅に相続税を節税
できる可能性があります。
また既に相続が発生している場合でも、相続発生後に相続対策を行える場合もあります。
6.まとめ
相続税の基礎控除とは一体何かを、具体的な例示を踏まえて
ここまで確認をしてきました。
注意することは
1.法定相続人の数を確認する
2.遺産の総額を把握する
3.生命保険の非課税金額は控除して比較する
4.特例適用前の金額と基礎控除を比較する |
上記のとおりです。
ただ、相続税には期限があります。
「法定相続人の数」や「遺産の総額」についてはご自身で分からない方もいらっしゃると
思いますので、少しでもこれらの計算について不安に思った場合は、相続税の専門家であ
る名古屋相続税無料診断センターに聞きましょう。
著者情報
-
「税理士業はサービス業」 をモットーに、日々サービスの向上に精力的に取り組む。
趣味は、筋トレとマラソン。忙しくても週5回以上走り、週4回ジムに通うのが健康の秘訣。
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